XXL/岡崎体育(2017)
- アーティスト: 岡崎体育
- 出版社/メーカー: SME
- 発売日: 2017/06/14
- メディア: CD
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まず「BASIN TECHNO」の感想を書こうかと思ったんですが、どうしても「鴨川等間隔」と「式」の話がしたかったので「XXL」の感想を書きます。
世間一般が想像し求める「岡崎体育」の曲と、そうではない岡崎体育の曲、両方がバランスよく入ってる。とにかく「式」を聞いてくれ。
岡崎体育さんのCDは高音がシャリシャリしすぎで頭痛が誘発されやすいので、イコライザをポップスとかにして平坦な音にすると聞きやすいです(私の耳の都合はどうでもいい)。
1 XXL
歌詞確認するまで「ぼっちの賛美歌」だと思っててすみません。
例によって意味がありそうでなさそうでありそうな不思議な言葉の組み合わせが大好きなんですけど、つまりこの曲の歌詞が好き。「シマウマの中でも比較的凶暴なほうの個体」「将来のために塾に通って 何度も細かく会釈挟んで」のとこ好き。
こういうのをハードコアテクノって呼んでいいの? なんて表現するのが正しいの? 音楽まじわかんない
2 感情のピクセル
岡崎体育 『感情のピクセル』Music Video - YouTube
パロとかMADとかで関係ないとこに迷惑かけるのってニコ厨だけじゃないんだなって思った(年齢層は同じだと思うけど)。それとは別として、ご本人が反応してしまったことについては、もう少しロケ地を変えるとか最初からネタパートのある曲だって分かるような作りだったらなんともなかったんじゃないかなぁと思う。
でもわたしは性格が悪いので「風の色はもう見えないけど 前までは見えてた 怖っ」で笑わない人は正気なの?と思っている。カッコイイ歌詞というのはそういう屁理屈も飲み込む包容力を備えたものであってほしい(し、岡崎体育というアーティストはこういう表現で照れ隠しするタイプであるとも思う)(ヤバTもそういうものとして聞いてます)。
どうでもいいけど歌詞の言葉遣いが初期のOLDCODEXっぽいなって思います(最近の聞いてないので知らないですけど)(OCDっていうかR・O・N?)。ラウドロックは平均的に好きです。
3 Natural Lips
岡崎体育 『Natural Lips』Music Video - YouTube
ソウル? ジャズ? アシッドジャズ? R&B?? もう全然わかんない。歌によって声の使い分けがすごい。テクノポップ界の宮田幸季。
この人の、「こういうことすればこういう層にウケるだろうな」っていうマーケティング能力と、それに見合う実力が本当にすごいなぁと思う。どちらかだけではダメで、どちらかだけが突出しててもダメ。すごいよなあ。すごい人ですよ。そういう計算を特に隠してもないのが面白い。
「英語っぽい」という点に関しては、うまいなぁ~と思う部分と、これはさすがにwwwと思う部分がほどよく混ざってて、ツッコミどころのテンポがよくて楽しい。「朝は来ないよ」「引っ張ったり 押し込んだり」「煌びやかに見えんの?」のあたりだいぶ無理ある。「定期的に言わして」のとこ完全にstepって言ってるでしょ!!
4 Horoscope
怒濤の「模造紙」サンプリングのところ、「ジャンボタニシ」思い出す。
面白いし好きなんだけど、ちょっと負の感情がトゲトゲしすぎてあんまり楽しい曲ではないなと思う。面白いんだけど。
6 電車で聴くと映画の主人公になれる曲 (Interlude)
「君の名は。」の劇伴っぽい。私がろくに映画観ないせいかとは思うけど、こんなBGMが流れる映画ってあまり思いつかないのでピンとこない。ドラマ系の邦画とか?
Instrumentalじゃなくて「Interlude」であって、ここ先が第二幕。
7 Open
第二幕Open。ライブの1曲目っぽいなぁと思ってたけどまさにそうらしいですね。
8 観察日記
好みとしてはもう少しストレートな表現が好きなんだけど、岡崎体育のこの系統の曲が好き。基本的に私はストーリーがあって動きがある曲よりも、ただただ突っ立ってることを歌う曲のほうが好きで(起承転結のどこか一点だけを歌ってるような曲)、個人的な賞味期限も長い。
岡崎体育のこの系統の歌で、彼の実体験そのものズバリってひとつもないんじゃないかと思うんだけど(勝手に思いこんでるだけです)、誰もがふと感じたことのある空気や雰囲気のエッセンスを抽出するのが抜群にうまいと思う(何もかも私が勝手に思いこんでるだけです)。
9 Snack
岡崎体育 - SNACK 【MUSIC VIDEO】 - YouTube
イワヤマトンネルに世代を感じる。
曲も歌詞もけだるくて、「すすめ」とは歌うけれども全速前進という感じはしない。クラスメイトとだらだら話しながら、どこへともなくぷらぷら歩いていくような速度。
抽象的な表現が多いけど、委員長に失恋した男子中学生の曲なのかな。
10 鴨川等間隔
岡崎体育 - 鴨川等間隔 【MUSIC VIDEO】 - YouTube
インディーズ時代からのファンはコレジャナイ派も多いらしいけど、わたしはこっちのほうがあか抜けてて好き。擬宝珠をコネコネすな。
もう私が言いたいようなことは大概のブログに書いてあったので付け足すべきことは何もないんですけど、周りが在学生でなくなる経験なんてない聞き手にすら「あの空気感」を感じさせる音と言葉がすごくないですか? このえぐり方。文系5年生(決めつけ)の心象のえぐり方がえぐい。わたしはこの曲を聞くたびに、友達がいない講義が終わったあと玄関に向かう廊下の足音とにおいを思い出します。別にその講義を友達が取ってなかっただけで友達がいなかったわけじゃないから!
前述のブログ等ではほぼ100%が「見下ろしながら見下される」に言及していたので私もしますが、ここのミソは「たぶん見下されてすらいない」というところですね。
見下ろしながら見下される地位にいたことのある人には分かると思うんですが、中学高校の激狭コミュニティ内ならまだしも、大学で過ごす彼らに我々を見下すような暇はないですよ。存在すら特に意識されていません。お互いに別の生きものなんだもの。それを自覚した上で「見下ろしながら見下される」と歌い、でも「それくらいの許容や容赦を保てる心を育みたい」、「幹から腐った訳では無いぜ」というところに悲哀を感じるんだなあ みつを
いろんな人がくるりっぽいと言っているので今度くるりを聞いてみたいと思う。ギターが京都産のバンドっぽいらしいよ。なんだそれ。
12 式
岡崎体育 『式』Music Video - YouTube
「先に呆けてしまえば 寂しくないかな 飯を口からこぼして テイブルを汚して にたついてる私を赦さないで」という歌詞、一生忘れないんじゃないかと思う。小説でなくドラマでなく映画でなく音楽で、かつ岡崎体育のような立ち位置の歌手が、このタイミングでこの曲を出した、というのがすっげえです。
「色んな色の絵具を脳みそに塗っていくみたいだ」で想起されるのはやっぱりアルツハイマー。この曲を聞くたびにアルツハイマーだった親族を思い出す。曲が変にドラマチックでなく、歌い方もどこか素朴なのがとてもよくて、心に響く。
岡崎体育の詞は必ずしも実体験じゃないと思うって言ったけど、「瞳に黴が生えても 言葉に血の通った話がしたい」は実体験なしで書けるものじゃないと思う。実体験じゃなかったら申し訳ない。どちらにしろ間違いなく表現力おばけだよ。
この曲についていろいろ書き散らかしたかったんだけど、いざ書こうとすると全然まとまらなかった。とりあえず歌詞を読んでMVを見てCDを聞いてください。